今日のムンテラは、だいたい想像がついていた。
昨日の夜に、いきなり夜勤の看護師さんからムンテラの電話がかかってきたからだ。
良い知らせで、急なわけないよね。
というわけで、想像通り、今日のムンテラではオレが代表でNO-CPRのサインをした。
そして、このコロナ渦ということで、これまで面会が一切許可されていなかったのにも関わらず、いきなり面会が許可になった。
(なぜ、そうなのかは、想像がつく)
母に会った。点滴は当たり前として酸素1Lのネーザルをしていた。息も苦しそうだった。
母は、初めて自分の遺産の話をしだした。で、自分に保険金の回収を命じた。
母は商売人の家系だ。そして、オレもそれを受け継いでいる。
元気がなかった母は、お金の話を始めると、どんどん元気になり笑いも出てきた。
自分のことではなく、遺産の割り振りの話をし始めた。
不覚にも、オレは泣いてしまった。
母は贅沢したこともなく、正社員で働いたこともないのに、びっくりするほどの(母の現状からすると)遺産を持っていたからだ。
「人は見かけによらないのだ」
そして、最後まで商売人の血が流れている母にたくましさを感じた。
現実的で、強い。
葬式の業者の希望や、墓地の希望などを述べていた。
オレは思った。
「まさに、オレの母だ」と。
しっかりと母の魂を受け継いでいるのは、このオレだった。
オレのみすぼらしい姿を見て、中身が当てられる人はいないだろう。
オレは、「母の正当な後継者」なのだ。
オレは、母の言う通り、保険金の申請を行うのであった。
母にお金の心配をさせたくない。(いい意味でも悪い意味でも、最後まで現実的な母である)
そして、オレは母の血をついで、立派な「本当の金持ち」になるからな。
母の遺産は、オレが「100倍」にしてやる。
オレ自身の生活のことは言うまでもない。
「現実と向き合い」
そして、「勝つ」
それを、人に知らしめなくてもよいのだ。
おわり