怖いことが当たり前のようになる。
朝、オレはおばあさんに鼻から管を入れていた。これを胃まで通すのだ。なかなか飲み込んでくれないため、オレは口から手を突っ込んでいた(これも当たり前のようにやる)
そうすると、嘔吐した。
別の部屋から吸引機というものを引っ張ってきて、吐いたものを吸い込む。そうしないと、詰まって死ぬ。これで死んだらオレが殺したことになる。が、それすらも日常茶飯事であり、全く心は動かない。
酸素の数字が80しかない。となりに看護婦さんが通りかかったので、酸素持ってきて、と言う。
持ってきた。
マスクにつないで、ボンベを全開にする。同時に、吸引の管を肺まで入れて詰まっているものを全部取る。白い痰が多量に引けた。
酸素の数字も急回復。ここまで、二人とも表情も特に変わらず(よくあることである)きれいに詰まっているものを取ったので、酸素も徐々に下げていき、最後は普通通りになった。嘔吐して汚れた着物を着替えさせる。
これにて終了。
他の看護婦さんも、まあ良かったね〜みたいな感じである。
普通の光景である。
なんとも思わなくなっている自分も周りも、変だといえば変だ。この仕事を続けるためには「何かをマヒ」させないと続かない。
おわり